研究者の生活を支える「学振」って?

修士課程へ進学した人の多くが博士課程への進学や、研究者になることを考えたことがあると思います。 進路の決断をするうえで、進学後や研究者としての生きていく中での不安の種の一つとして、 やはり【金銭面】に対する不安ではないでしょうか?

しかし、そもそも身近に研究者で生活している人がいる人がいて、 どんな環境、経済状況で暮らしているか知っているという人は少ないのではないでしょうか?

「研究者として生きていくってどんな感じなのかな」と気になっている方も、 今回は、主に博士課程の大学院生やその後の研究者の生活を支えている、通称「学振」についてみていきましょう!

※できるだけ正確な記載を心がけますが、正しい内容に関しては、日本学術振興会のページにある募集要項や申請書様式をお読みいただきますようお願い致します。

そもそも学振って?

学振とは、文部科学省所管の独立行政法人である「日本学術振興会」の略称であり、 研究者に2 ~ 3 年の間、研究奨励金および科研費を与える制度を指します。

研究奨励金がいわゆる給料(生活費)になります。

科研費は科学研究費助成事業の略称であることからもわかるように、自分の研究に使えるお金となります。

研究費の助成をする組織は多く存在しますが、その中でも国内で最も規模が大きく著名な組織と考えて良いでしょう。 大学の教員は自分の所属する大学からも研究費を交付されますが、 その額は(大学により様々ですが)決して多いとは言えないため、この科研費を取得できるか否かで可能な研究の規模が大きく変わると言われています。 そのため、「日本学術振興会」は研究者にとって非常に重要な存在と位置付けることができます。

また、一般的には、特別研究員制度のことを「学振」と呼ぶことが多く、 特別研究員に採用された際に、「学振に受かった/採用された」と言うことが多いです。

参考:科学研究費助成事業(日本学術振興会)

学振には5つの区分がある

学振には、DC1、DC2、PD、RPD、CPDの5区分があります。 ※令和元年度より、SPDが廃止され、新たにCPDが加わりました。

それぞれ何が違うのか、詳しく見ていきましょう。

DC1(大学院博士課程在学者) = 採用年度に新しく博士課程1年になった特別研究員のこと

DC2(大学院博士課程在学者) = 採用年度に博士課程2年次以上の特別研究員のこと

PD(博士の学位取得者) = いわゆるポスドク研究員のこと

RPD(博士の学位取得者) = 「出産・育児による研究中断後に円滑に研究現場に復帰できるように支援」を受ける特別研究員のこと

CPD(国際競争力強化研究員) = 「海外の大学等研究機関で長期間研究に専念できるように支援」を受ける国際競争力強化研究員のことで、令和元年度から新しく創設されました。

参考:日本学術振興会「特別研究員 申請資格・支給経費・採用期間」

区分別の申請資格・支給経費・採用期間

お金の面を見てみると、研究奨励金は月額20万(年額240万円)と月額36万2千円(年額434万4千円)、月額44万6千円(年額535万2千円)となります。 ボーナスはありません。

また採用率も約19%~29%と、狭き門といえるでしょう。 申請者はみな研究志望であり、落ちてしまえば生活費も手に入れられないので、 バイトなどをして自力で生計を立てなければならないことを考えると戦いは熾烈です。

参考:日本学術振興会「特別研究員 申請資格・支給経費・採用期間」

参考:日本学術振興会「採用状況」

申請の時期とスケジュール

DC1・DC2・PDについての申請の流れを見ていきましょう。

募集要項公開

時期:採用開始の前年の2月上旬 ※毎年2月頃になると、翌年4月から採用される特別研究員に関する募集要項が公式ホームページに公開されます。

申請受付

時期:採用開始の前年4月中旬~6月上旬 ※4月から6月上旬頃まで、電子申請システムにて申請書の受付がなされます。

本年度の受付期間は、2022年4月中旬〜6月2日17:00となります。

一段目の書面審査

時期:採用開始の前年7月~8月 ※第1次選考では、6人の専門委員による書面審査が行われます。

二段目の書面審査

時期:採用開始の前年8~9月頃

第一次選考結果開示(電子申請システム)

時期:採用開始の前年の10月上旬頃

第二次選考結果開示(電子申請システム)

時期:採用開始年の1月上旬頃

採用内定・不採用通知

時期:採用開始年の2月下旬頃 ※4月1日をもって、採用内定者の採用が正式に決定します。

参考:日本学術振興会「選考日程 」

まとめ

本記事では、日本の研究者を支える「学振」について見てきました。

最近は、日本の研究者の海外流出や、研究力の低下が問題になっています。 原因は様々なものがあると思いますが、主な原因の一つとして研究者が経済的・社会的に不遇であることも挙げられるでしょう。

今後の日本の研究環境の改善に期待しましょう。

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