いまも深刻な「ポスドク問題」前編

有能な研究員が抱える「ポスドク問題」とは?

「ポスドク」とは、大学院の博士課程を修了した後、大学や研究機関で任期付きの職に就いている研究員のことです。

昨今、ポスドクの雇用が多くの問題をはらんでいることが問題視されています。

どのような不安要素があるのか、詳しく見ていきましょう。

任期制や非常勤勤務といった雇用面での不安

平均任期が1~3年の任期制という雇用形態であり、ほとんどが非常勤勤務のため、ポスドクは非常に不安定な立場に置かれています。 任期満了後、再任用されることもありますが、大半は「任期満了につき雇い止め」というケースが多いとのこと。 新たな任用先が決まっていなければ、無職となり収入も途絶えます。 仮に次の任用先が決まっていたとしても、綱渡り状態な生活のため、結婚や妊娠を躊躇する人が多くいるようです。

キャリアパス整備の不備

欧米では、ポスドクは正規の研究職に就く前のトレーニング期間として定着しています。 博士課程を修了した研究者はポスドクとして1、2ヶ所の大学・研究機関で経験を積んだあと、大学や研究機関の正規職員となって自分の研究を続けたり、民間企業の研究職に就いたりするのが、研究者としての一般的なキャリアパスとなっています。

一方、日本ではこうしたキャリアパスが十分に整備されていないのが現状です。 1990年代以降、科学技術の振興を目指した国の方針により各大学は大学院の定員を大幅に増やし、それに伴って博士課程に進む人も急激に増えました。

しかし、博士課程修了者の主な就職先となる大学や研究機関のポストは増えず、民間企業も採用には消極的。 この結果、就職のできない多くの博士課程修了者が生まれてしまいました。

日本のポスドクは事実上、こうした就職のできない博士課程修了者の受け皿として機能してきました。 しかし、とりあえずポスドクになって当面の働き口を確保したとしても、就職状況が変わることはありません。 次に進むべき道なく、ポスドクを続けざるを得ない…。博士課程を修了した優秀な人材が、将来展望も描けず、不安定な身分のままさまよい続けている、これがいわゆる「ポスドク問題」です。

待遇および福利厚生

雇用期間の見通しが不透明なうえ、待遇も良いとは言えない状況です。その理由の一つが、社会保険に加入していないという事例も多く、問題視されています。

日本学術会議ではポスドクの問題点を実態調査しており、福利厚生では、健康保険が無い人が全体の一割。 通勤手当がないというのが3割、年休がもらえないという人も全体の1割となってます。 福利厚生と年収について、ポスドクは実際に問題となってます。

有能な人材の使い捨て

ポスドクの多くは、優秀な能力をもっている方や人類のために役立つ研究をしたいと思っている方だと思います。 正当に評価される世の中であれば、自身が極めたい研究課題に邁進できるかもしれません。

しかし、正規雇用の道が閉ざされている今の状態では厳しく、有能な人材を薄給で都合よく使い捨てているとの見方もあるようです。

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